あなたは「疾病利得」という言葉をご存知でしょうか。「しっぺいりとく」と読み、その字のごとく、「疾病」が「利得=メリット」になっていることを表しています。
「疾病」なんて、ない方がいいですよね。では、この言葉は一体何を指しているのでしょうか。
まずは、『しっておきたい精神医学の基礎知識』(誠信書房)よりご紹介します。
症状を呈することによって患者にもたらされる心理的あるいは現実的満足のことで、一次疾病利得と二次疾病利得がある。一次疾病利得はより無意識的なプロセスで、身体的な症状に逃避することによって心的な葛藤に直面することを避けることができることを指す。二次疾病利得は、その症状の出現の結果として現実的な利益を得る(例えば社会から補償を得る、学校に行かなくてすむ、など)というものである。 出典:『しっておきたい精神医学の基礎知識』誠信書房,2007,p198
「体調不良があるからこそ得られるもの」があったなら、その体調不良はなかなか改善しないでしょう。
その体調不良があるおかげで、得られるもの(嬉しいこと、ラッキーなことなど)が何もなく、むしろ困ること(不自由さ、自分らしくないなど)が目に見えて起きていたなら、何とか改善しようとするものです。
とはいえ、本人は無意識です。心の中で「体調がよくなってしまったら困るなぁ」なんて思っていません。そこが難しいところなんですね。
腸セラピーサロンにも、何らかの体調不良でお困りの方がいらっしゃいます。もしかしたら中には「疾病利得」の方もいらっしゃることもあるでしょう。私たちセラピストはどのようなカウンセリングを行うのか、一部をご紹介致します。
望みを自分の口で言えることが大事
腸セラピスト養成スクールでもカウンセリングの練習は行います。
そのときに大事にしているのが、セラピストが正論に当てはめて話を勝手に進めないことです。
例えば、「便秘なんです」とクライアント様から言われたとき、どういう状態になるのがクライアント様の望みなのかを改めて伺います。
「そんなの、便秘が解消することが望みに決まっている!」と思われるかもしれませんが、「便秘なんです」で終わるより、「便秘なんです。毎日スッキリ出てほしいです」と希望(望み)をご自身で言えた方が、気持ちが前向きではないでしょうか。
人はイメージできないことは、実現できません。
自分の口で言って、それを自分の耳に入れて、改めて望みを認識するということが大事なのです。
・「膝が痛い」で終わるより、「膝が痛い。でも駅まで歩けるようになりたい」
・「お腹周りのお肉が気になる」より、「お腹周りのお肉が気になるから、5キロ痩せたい」
・「自信がない」より、「自信がない。会議で自分の意見を言えるようになりたい」
痛い、つらい、困っている…このようなことは言えても、「だからこうしたい」「今度はこうなりたい」までをセットでイメージできている人は、意外と多くはないなぁという印象があります。これはイメージトレーニングなので、練習すればできるようになります。
疾病をメリットに感じていない方は、望みをイメージして言葉にしてみてくださいね。
そして世の中には、「疾病利得」の人もやはりいらっしゃいます。ご本人は本当に無意識なので、正論の押し付けにならないように、コミュニケーションをとりながらセラピーやカウンセリングを行っていきたいですね。