石田三成の「三献の茶」のエピソードはご存じでしょうか。
豊臣秀吉が鷹狩りの帰りに立ち寄った茶屋でお茶を頼むと、出てきた小姓がお茶碗一杯のぬるいお茶を持ってきました。一気に飲み干した秀吉はおかわりを申し出ると、先ほどより熱めのお茶、もう一杯頼むと、もっと熱いお茶が小さなお茶碗に入って出てきたのです。
鷹狩りをしていた秀吉が飲むには、まずはごくごくと一気に飲めるぬるめがよく、徐々に熱くしながらも量を調整していくというのは、飲む人のことを思いやっている行動ですよね。秀吉が気に入ったこの小姓こそが、石田三成だったとのこと、とても有名なお話しです。
さて、サロンでお客様に提供するお茶などのドリンクは、熱めですか? それともぬるめですか? その温度設定は何を根拠にしていますか。
お茶はセラピストの都合ではなくお客様に合わせて提供しよう
アロマトリートメントやボディケアなどのサロンでお茶を出すタイミングは、お客様が来店されたときと施術後の2回というところが多いのではないでしょうか。
お客様に出すお茶であれば、熱い方がいいと思われるかもしれませんが、サロンで出すお茶はぬるい方がいいなと私は思います。セラピスト目線でも、自分がお客さんの立場になったときにも、そう思うのです。
ウエルカムドリンクがぬるめがいい理由
夏場、暑い中来られる方には冷たいものでもぬるめでも、どちらでもいいと思います。健康上は冷たいのはよくないと思いがちですが、炎天下で徒歩で来られた方には一旦身体の熱を冷ましていただくためにもいいかなと思います。冷たい飲み物の場合は、冷えているけど氷がないとか、小さめのカップが身体に負担をかけないのではないでしょうか。
では冬なら外が寒いから、熱いお茶がいいかというと、そうでもありません。熱いコーヒーをゆっくり飲みながらお話しをするような場であればともかく、目的が施術であれば、飲むために時間を費やすのはお客様も気を遣われます。ゆっくりでも喉の渇きを潤せる程度がいいかと思います。
あとは「うちのサロンは車で来る人しか来ないから、常温でも不快にはならない」とか、「その都度好きな飲み物を聞いて出す」とか、ウエルカムドリンクはサロンとお客様の両方を考えて、サロンによって違っていいと思います。
施術後の飲み物は熱くしない!
大事なのは施術後のドリンクです。施術後は身体が水分を欲しているので、ぐびぐびと飲みやすい温度がオススメです。ここで熱々のを出してしまうと、お客様もある程度飲まないと帰りづらい…でも熱すぎて口をつけるのに時間がかかってしまう…というなんとも言えない時間を過ごすことになりかねません。しかも小さなサロンの場合、お客様がセラピストに見られながらお茶が冷めるのを待つのは、何か話した方がいいかなと気を遣わせることもあるでしょう。
あと、熱々のハーブティーなんだけど、全然蒸らされてなくて、ほとんどお湯状態のものを出されたこともあります。すぐにお湯を注いで、1分程度しか待てずに出されたのだと思います。白湯として出されていてもよかったんですが、あーこれはまだ十分に蒸らせてないんだなと一目瞭然でした。猫舌ではないのですが、全身の施術後だったので、熱々を出されたのも残念でした。
セラピスト一人で全てのオペレーションをこなすとなると、ちょうどいいタイミングでのお茶を用意するのは容易いことではないかもしれません。それでも、このタイミングでお湯を準備しよう、このタイミングでお湯を注ごうということは逆算してできるはずです。ここまでのことをお客様が来られる前に(サロンオープン前に)試しておくのです。
ティータイムが苦痛でやめたヨガ
かつて習っていたヨガスタジオでは、レッスンが終わって着替えた後、ヨガの先生と向かい合ってティータイムを過ごすというところがありました。「ティータイム」というだけあって、必ずお菓子も出されます。先生はどちらかというと大人しい感じの先生だったので、向かい合わせで無言になるのを苦痛に感じた私は一生懸命、話題を見つけなければ!と気を遣ったのを覚えています。席を立つタイミングも悩みました。
サロンのお茶は接待ではない
サロンのお客様は、会議室や応接間にお通しするお客様ではありません。サロンの雰囲気やコンセプト、セラピストのキャラクターやお客様のニーズを把握して、タイミングに応じて、また季節や気候にあった飲み物を提供したいですね。
特に最後のサロンでの様子は、お客様が帰られてからも印象に残りやすいです。気を遣わせない、快適に過ごしていただける空間を演出していきましょう。